PRESENTATION

京都市伏見区桃山 福島太夫の家

福島太夫の家|計画Plan|デザイン住宅、建築/設計/施工|京都一級建築士事務所|起廣プラン

「土地に根付いた「かたち」-福島太夫の家」

【設計思想】
場所性と意匠について、その周辺にあるそのままの形を模写することは街並みとしては連続性があり景観としても良いように思えるが、あまりにもストレートすぎて、均一的で未来性がなく夢がなくなる。歴史を継承するということは、表層だけではなく、その土地がもつ伝統、文化も含め、今日までの深いストーリーをも受け継ぐことである。その歴史がかすかににじみ出てくるような表現をすることが重要である。
歴史ある町は、空気感、生活感など土地に独特の臭いが漂う。表現として、道と庭との関係、家中の生活と近隣の関係、地域の行事とその関わりなど、それらの中から何を受継ぐのか表面的な「かたち」ではなく、内面的な心理を突くようなデザインにならなくてはならない。何げなく、かすかに、この地の伝統を感じるということが将来的に、時代の移ろいに伴って見えていくものである。設計にあたっては、歴史的土地風土の特徴を見出すこと、町に新しい息吹を与え斬新な形で、未来と伝統を継承する形を表現することが不可欠である。
”家”にはそれぞれの立地や家族構成、ライフスタイル、伝統といったコンテクスト(文脈・背景)があり、人それぞれに見合った住まい方がある。設計における”家”造りの基点として、このコンテクストをもっとも大切に考え、物の価値を正しく評価し、美しさと快適さを増すものでなければならない。
設計で大事なことは、あくまでも人が住まいする環境作りであり、安全、快適は言うまでも無く、現在的に将来的に対応出来るよう機能・性能・デザインをバランス良く配分することである。部分的に工事費が偏ったり、機能ばかりが先行してしまったり、デザインを重視し過ぎて機能や性能が劣るようでは、住宅の価値も偏り、全体から見て価値が下がる。バランスの取れた設計が重要で、常に配分の調整をしていかなければならない。
資産形成を実現できる住宅は、人々に高い満足をいつまでも与え続けられることである。現在に伝承され、高い評価を受けているものが、住文化、町並み文化である。
その文化を現在の住空間形成に正しく生かすことが、資産形成のための住宅づくりである。
人々は住宅を物として取得するのだが、本当に手に入れたいと思っているのは、その住宅は勿論のこと、享受できる生活上の効用である、文化性、利便性、安全性である。子供の教育、日常の買い物、通勤通学、安全に遊びやリクレーションを満喫できる環境を享受したいと思っているのである。人が高い満足を得る住宅を供給することこそ、結果的に資産形成を確実にするものである。
デザイン、機能、性能において優れたものである為には、住宅地全体の価値を一元的に高める仕組みが必要で、どれだけ立派な住宅であっても、周辺環境と調和していなかったり、環境がスラム化や衰退してしまったりすれば、その住宅としての資産価値は下落してしまう。住宅単体の資産価値は、そのコミュニティ全体の資産価値に大きく左右されることになる。重要なのは、一人ひとりの設計者が街の環境に作り対して同等の考えを持つことであり、コミュニティ全体の資産価値を高めることが美しいまちづくりに繋がる。

【設計コンセプト】
伏し水の名水と酒処で有名な大名屋敷の名や職業にちなんだ町名が数多く残る町伏見。
そんな歴史ある伏見の土地に根付いた「かたち」住宅のあり方の研究である。
町並みに溶け込み、生活感がにじみ出ている「かたち」の表現を研究する。
老後、夫婦2人の生活で、ある時は子供達と大勢の来客で周囲に気を遣わず、ひと時を楽しく過ごす生活の家造り。子供達にとっても安らぐ場であり、羽を伸ばせる実家であること。何処に居ても四季を感じ、日差しを感じ、風を感じる環境作りを目的とする。【土地の選定】
この周辺は、豊臣秀吉の伏見城築城からの城下町で大名屋敷の名や職業にちなんだ町名が数多く残っている歴史ある町である。また、伏し水の名水と酒処でも有名なところでもある。
地形としては、京都市の東山の南端に位置し、南北は水平で、東西方向は西斜面となっている。西側に国道24号線、その西には近鉄、京阪の丹波橋駅があり、京都市内は勿論、大阪、奈良へのアクセスが充実していて非常に足場の良いところである。
設定している土地の区画は、平坦で、国道から50m程しか離れてないにもかかわらず騒音も少なく、駅まで4分と理想的な位置であり、区画も大きく、閑静で落着いた町並みである。
土地が平坦であること、東南の角地で、道路幅2方向共6.0mあり、明るくゆったりしている事により決定する。
現況は、木造2階建ての住宅が建っていて、隣地及び道路境界にはブロック塀で囲まれている。南道路側には、高さ5.0mの楠木が2本あり、この楠木を残す。

【構法】
内部空間は、登り梁架構で小屋組全体を表わしとし、棟持ち柱を配置し、床は高低差をつけて、変化のある空間構成で、未来と伝統を継承する形を造る。間取りや構造グリッドが不自然にならないよう構造並びに屋根形状からも、経済性、明快性、単純性の合理化を図る。

【工法】
伝統工法では、使用材料、仕上げ材料、軸組みの仕口に至るまで徹底し、一貫した必要性がある。また、プランから大胆な間取りは制限され、古風な形式になる。
現在の在来工法は、自由に金物を使用することで耐力壁の確保や、窓の開口が大きく取れることから構造上の自由性もあり在来工法(近代)とする。

【部材】
マテリアルは、昔からの伝統ある自然素材を基本とし、各部屋に方向性を表す仕上げで空間性(吹抜けや土間)にマッチした内容とする。
構造の見え掛かりの使用材は、棟木、登り梁、母屋、垂木、野地材等を杉材、柱は檜とし、日本の気候風土に合う内地材とする。外部に関して、屋根は日本瓦一文字葺き、外壁は漆喰塗り、腰板は杉の無垢板(立て貼り)とする。内部に関して、天井は小屋組表わしで杉の無垢板、壁面は漆喰塗り、床は無垢フローリング、天井の高いリビングは石張り、エントランスではモルタル洗い出しの仕上げとする。新建材の合板や樹脂関係は一切使用しない。色関係も奇抜な色は避け、伝統ある和風にちなんだ色使いとする。

【素材】
天井には杉の無垢板、壁には左官の漆喰塗り、床には無垢のフローリング材を基本に仕上げる。塗装は、自然塗料材を使用する。人の肌に触れるところに”ナチュラルな素材”を基本とする。

【手法工夫】
外部に面する開口部の建具は、横内事務所の設計にあるように、内部から見て隠し框の納まりで統一する。よって内部から複雑な線が隠れ、柱のみが立っているようなシンプルな内部空間とする。
一貫した設計の考え方により、納まりや使用材料、仕上げで空間の質を高める。

【効用】
在来工法により開口スパンや仕口などの構造による自由性を取入れ、小屋組みは全て登り梁架構表し、外部面開口部は、全て隠し框納めとすることで内部空間の処理は、ほぼ統一出来る。登り梁架構で小屋組全体を表わしとすることは、上質の材料と施工費がかさむものの仕上がりは、伝統的で美的な構造骨組み、空間の大らかさ、ゆとり等受取る事ができ、より以上の付加価値が生まれる。
木製建具について、現在はサッシが当たり前のように使われているが、気密性の確保を充実すれば、内外観上純木造とて仕上げられ、本来の木質で統一できる。
新建材や樹脂は、何年経っても色艶が変わらなく奥行きが無いことから安っぽく見える。無垢材を使用することにより、年月と共に年輪を重ね味わいが増す。また、漆喰塗りについても同様で面に奥行きが見える。それには耐久性のある材料と何年後にはどのようになるか熟知しておく必要がある。
2階の窓は腰掛け窓とし、室内から腰が掛けられるよう低く押え、外部には手摺を一筋入れる。中庭が望め外観上安定感と風情ある町家の雰囲気が出る。

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